チャネルを束ねて無線LANの高速化、HT160について

IEEE 802.11acのwave規格から採用されたチャネルボンディングのHT160について、いくつか製品が出始めてきたので、技術内容と現状の製品紹介をしたいと思います。

まとめ
  • 11acの規格のため、HT160は5GHz帯のみで利用可。
  • HT160はアンテナ数を増やさずに最大速度を向上させることができる。
  • 無線LANルータ・子機ともにHT160対応製品がまだ限られている。
  • 同じ1.7Gbps表記でも注意が必要。
  • 現時点では個人的にはオススメではない。
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HT160とは

HT160とはチャネルボンディングで、8つのチャネルを束ねて利用し高速がする技術です。

1つのチャネルが20MHzの幅を利用し、8つ束ねて合計160MHzとなるためHT160となります。11acのwave2から採用された技術となります。

チャネルボンディングについては以下の記事を参考にしてください。

無線LANの高速化技術「チャネルボンディング」について
今回は、無線LANの代表的な高速化技術の一つ「チャネルボンディング」について説明をしたいと思います。 まとめ 複数チャネル利用で高速化! 2.4GHzでは利用できないことが多い 無線子機側もチャネルボンディングに対応していること ※独学での...

方式が2つある

8つのチャネルを束ねるチャネルボンディングですが、束ねる方法に2つの方式が存在します。

①「連続160MHz」

いままでのチャネルボンディング同様に、連続したチャネルを束ねる方法です。

「W52・W53」と「W56」で離れた区間があるため、連続で8chを束ねれるパターンは2パターンとなります。

②「80MHz+80MHz」

連続した4chを2つ利用して合計8つのチャネルを利用する方式です。
「連続160MHz」よりは利用できるパターンは増えますが、国内のHT160の製品では対応していない機器が多いようです。

HT160のメリット・デメリット

メリット

メリットとしては、MIMOでアンテナ数を増やさずに通信速度を上げることが可能です。

アンテナ数を増やすとハードウェア的に制約が出たり、スマホなどはバッテリーの消耗が激しくなるので、アンテナ数は2本くらいにしといて、チャネルボンディングの幅を増やして速度を上げる方が、ハードウェア的にはメリットがあることが多いです。

デメリット

チャネルボンディングで同時利用するチャネル数を増やすことを引き換えに、送出できる電波強度が弱くなります。

よって、チャネルボンディングで束ねるチャネルを増やすほど距離が飛ばなくなります。

また、チャネル幅が広いと、他の無線LAN通信や、5GHz特有のレーダーに当たる確率が高くなるので、電波干渉により品質劣化や、DFSにより一時的な停止が発生する確率が上がります。

5GHz帯のレーダーについては以下の記事を参考にしてください。

5GHz帯の無線LAN。外からのレーダーに気をつけろ!
5GHz(11ac/n/a)特有のレーダーに関することをまとめてみました。 まとめ W53・W56はレーダ受信の可能性がある 意外とレーダーはある レーダーがないことを確認するため、起動時1分間は無線LAN利用不可 使用中にレーダを受信する...

HT160の注意事項

HT160でも前述のとおり、「連続160MHz」と「80MHz+80MHz」の2つの方式があり、無線LANルータとノートパソコンなどのクライアントが、同じ方式でないとHT160として通信ができないので注意が必要です。

また、1.7Gbps対応と謳った製品でも、

①アンテナ数が4つ(4×4)で、HT80対応 = 1.7Gbps
②アンテナ数が2つ(2×2)で、HT160対応 = 1.7Gbps

は両方、規格上の最大値が1.7Gbpsとなりますが、同じ1.7Gbpsでも①と②の接続だと、下位互換で、アンテナ数2×2 HT80 での接続となり、最大速度は866Mbpsの接続となるので注意が必要です。

HT160対応製品(2018年7月現在)

現時点で、私の把握しているHT160対応製品は以下です。

HT160対応 無線LANルータ

ネットギア「Nighthawk X4S R7800-100JPS」

Synology「RT2600ac」

HT160対応ノートPC

MSI 「GE63 Raider RGB 8RF」

MSI 「GF72 8RE」

MSI 「GF62 8RD」

マウスコンピューター 「m-Book K690」
※BTOオプションで選択

ノートPCで1733MbpsのWi-Fiを利用可能! 15.6型「m-Book K690」シリーズ、マウスコンピューターが発売、6コアCore-i7搭載 
株式会社マウスコンピューターは24日、IEEE 802.11acのWave 2に対応し、最大転送速度1733Mbpsとなる「Intel Wireless-AC 9560」をBTOオプションで選択できる15.6型ノートPC「m-Book K6...

Acer「Nitro 5 AN515-52-A58H」
※2018年7月12日に発売

ノートPCのWi-Fiで最大1.73GbbpsのHT160に対応、Acer「Nitro 5 AN515-52-A58H」 
日本エイサー株式会社(Acer)は、IEEE 802.11ac wave 2のオプション規格で最大1733MbpsのWi-Fi通信が可能な技術「HT160」に対応するノートPC「Nitro 5 AN515-52-A58H」を7月12日に発売...

最後に

正直、現段階ではHT160は個人的にはオススメできないです。理由としては、

  • 製品が少ない
  • 「連続160MHz」と「80MHz+80MHz」とかややこしい
  • HT160は品質を犠牲にする(距離とか干渉)。
  • 通常利用でそこまで通信速度を求める必要がない。それより安定通信。
  • もう少し待てば、次世代規格の11ax製品がでてくる

次世代規格の11axはこちらを参照

次世代高速無線LAN規格「11ax」について
最近、ネットのニュースで出てくることのある次世代無線LAN規格の「11ax」について概要をまとめてみます まとめ 混み合った環境でも4倍高速を目指した規格 2.4GHz/5GHz両方利用可能 現時点ではドラフト版。標準化完了は2019年頃予...

HT160 今はオススメはできないですが、新しい技術のメリット・デメリットを考察することは、後の新製品・新技術がでたときに活きてくるので、情報収集は続けていきたいです。

今日はここまで。。。

無線LAN
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